『怖い絵』中野 京子 ★★★★☆
西洋絵画20作品を解説した本ですが、描かれた時代の背景、絵の題材、題材の背景や解釈、画家、などで「怖い」側面を切り口に紹介しています。有名な絵が多くてとっつき易いし、特に時代背景や画家について「そうなんだ」という話が多くて面白かったです。(クノップフが描く女性が同じ顔なのは、下手な少女マンガ家みたいに顔のバージョンがないせいかと思ってたんだけど、違うんだ!同じ女性を描いてたんだ!とか。)
文章の表現力も豊かで、読んでいてワクワクする箇所も多かった。
何よりいいのは、「じゃあ、この画家のほかの絵もみてみたい」「この時代のことを、もちょっと知りたい」「題材の神話は?」というふうに、解説で閉じずに好奇心が広がるところですね。ゴヤとルドンの絵を色々見てみたくなりました。
『ほんの豚ですが』佐野洋子 ★★★
ほんの豚です。
そういえば、ドイツでは豚が幸運のしるしです。
色々な動物を素材に、イラストと、詩のような童話のような文章が添えられているつくり。
気に入ったのを1つ。
犬の章です。
犬
幼稚園で男の子と女の子がキスをしていた。おれはいいと思う。
駅で白人の女と黒人の男がキスをしていた。おれはいいと思う。
公園で高校生の男の子同士がキスをしていた。おれはいいと思う。
七十の老人と十六の女の子がキスをしていた。おれはいいと思う。
おれは二十六歳の人妻のふくらはぎをなめている。
「いやあーねえ、ポチったら」
おれの二十六歳の主人は、おれを抱き上げてキスをした。
おれはいいと思う。
書き写すうちによく分からなくなってきましたが、いいと思います。(エロ詩吟の人みたい。。)
『シズコさん』佐野洋子 ★★★★★
読んだのは少し前ですが、記録に残すために。この本すごいです。佐野洋子さんすごいです。
『半身』サラ・ウォーターズ ★★★☆
再読。ヴィクトリア朝時代のロンドンを舞台に監獄慰問と交霊会を手記風に綴った歴史ミステリー小説。
これは結末もなんとなく記憶に残ったまま読みましたが、再読でも面白いです。時代の風物が手に取るように描写されてます(杉浦日向子さんの江戸モノを読むような生々しさがあります)。しかし、とにかく息苦しい。ヴィクトリア朝時代、ロンドン、牢獄、セクシュアリティ、と閉塞感てんこもりです。
作者Sarah Watersは英文学専攻でPhDを取得、そのテーマは「1870年から現代までのレズビアン・ゲイ歴史文学」だったそうです。その論文を書いてるときに自分も小説が書けるんじゃないかと最初の作品"Tipping the Velvet"を脱稿。そして、spiritualism(心霊主義)に関する論文を書いた後、この"Affinity"(邦訳『半身』)を書き上げたと。(作者のオフィシャルサイト+wiki情報(英)より。大体は合っているかと思いますが裏はとってないので念のため。)なんというか筋金入りですね。背景描写に奥行きがあって生々しいのも納得です。
現在までの作品は以下。
* Tipping the Velvet, 1998(邦訳なし)
* Affinity, 1999(邦訳『半身』)
* Fingersmith, 2002(邦訳『荊の城』)
* The Night Watch, 2006(邦訳『夜愁』)
* The Little Stranger, 2009(邦訳なし)
明るいのと暗いのを交互に書いているみたいです。最初の3作はドラマ化されており、今4作目がBBCでドラマ化されてるそうです。
国会図書館デビュー
調べ物があって、国会図書館に初めて行きました。
開架がないので、図書館としてはさびしいですが、ピンポイントに物事を調べたい、既にあたりをつけた図書を見る、という目的ではすごく便利です。(いずれにせよ、国会図書館のページで前もって確認しておくのは必須。電子化されている書籍も多そうです。)
・備え付けPCで書籍検索して依頼して、20分くらい待って受け取る
・依頼&貸出できるのは同時に3冊まで
・コピー料金は、A4・B5サイズで1枚25円(大きいのはもっと高い)
入館時に各自にIDカードが渡されるのですが、申し込んだ図書が準備されると、電光掲示板に自分のID番号が出るわけです。自動車免許取った時を思い出します。
非常に手順が簡便化されておりシステマティックで、皆さんキビキビ働いて親切で、気持ちよかったです。来館者に接する人の仕事は機械的な作業の部分がほとんどのようで、司書さんも大変だなあと。カウンターの人に若い人が多いのは、アルバイトなんでしょうかね。新人さんとか研修の人がやってるのかな。古参の人は、図書館の奥の薄暗がりの中で、余人には想像もつかない、すっごく楽しい何かをしているのかもしれません。