『半身』サラ・ウォーターズ  ★★★☆

半身 (創元推理文庫)
再読。ヴィクトリア朝時代のロンドンを舞台に監獄慰問と交霊会を手記風に綴った歴史ミステリー小説。
これは結末もなんとなく記憶に残ったまま読みましたが、再読でも面白いです。時代の風物が手に取るように描写されてます(杉浦日向子さんの江戸モノを読むような生々しさがあります)。しかし、とにかく息苦しい。ヴィクトリア朝時代、ロンドン、牢獄、セクシュアリティ、と閉塞感てんこもりです。


作者Sarah Watersは英文学専攻でPhDを取得、そのテーマは「1870年から現代までのレズビアン・ゲイ歴史文学」だったそうです。その論文を書いてるときに自分も小説が書けるんじゃないかと最初の作品"Tipping the Velvet"を脱稿。そして、spiritualism(心霊主義)に関する論文を書いた後、この"Affinity"(邦訳『半身』)を書き上げたと。(作者のオフィシャルサイトwiki情報(英)より。大体は合っているかと思いますが裏はとってないので念のため。)なんというか筋金入りですね。背景描写に奥行きがあって生々しいのも納得です。


現在までの作品は以下。
* Tipping the Velvet, 1998(邦訳なし)
* Affinity, 1999(邦訳『半身』)
* Fingersmith, 2002(邦訳『荊の城』)
* The Night Watch, 2006(邦訳『夜愁』)
* The Little Stranger, 2009(邦訳なし)
明るいのと暗いのを交互に書いているみたいです。最初の3作はドラマ化されており、今4作目がBBCでドラマ化されてるそうです。