『仮面の告白』三島由紀夫

仮面の告白 (新潮文庫)
欧日協会の日本語図書館にて、さっそく三島を数冊発見。『仮面の告白』は以前(20歳くらいの時?忘れた…)読んだ時とは全く違った印象。かつては、さほどの印象を受けず、他の三島由紀夫の本も含めて「堅苦しく書く人だなあ」という印象だったんだけど、なんで??と自分でも不思議。だって、すごく初々しいくらいの青春小説ではないですか。
かつて堅苦しいと思ったのは、多分、分析的な自己撞着するような主人公の思考だったのかなあ、それもまた若者らしさと感じられる。読んでて恥ずかしいくらい(^_^;)。それよりも、前半部の、描写の繊細さと比喩と緊張感が豪華で圧倒される。前の方であればあるほど、気合が入っているのか、繊細かつ冷静で描写が高質な気がします。
インパクトが強いのは、鉄棒のシーン。主人公は中学生の時に、理由があって数年留年しており他の子供と比べて既に青年の肉体を持つ近江というマッチョ少年に肉体的に恋をするのだけれども、この彼が鉄棒する時の腋毛の描写がすごい!(しょうもなくてすみません(-_-;)。上から引き続き、腋のことばっかり…。)1ページほども費やし、普通だったら笑うよーというくらいなんだけど、読んでるうちは全く圧倒されて、この腋毛描写に説得されてしまう。
あと思ったのは、所々でコクトーの『恐るべき子供たち』を連想させること。近江少年はまるっきりダルジュロス(でしたっけ…)。幼年期の死の色の濃い描写、また、早朝の雪のシーンなど。ただし、主人公は近江少年にそんな子供っぽいことをされると偶像が壊れる、と雪合戦を許さないんだけど。
主人公が少年期に肉欲を感じた近江少年は、かえって観念的な描写で実在感が少ないのに、青年期に差し掛かる頃に肉欲はまるで感じないものの恋なのかどうかと観念的に悩む対象の園子は、むしろ肉の重みと言うか十分な実在感が感じられるのが不思議。いや不思議じゃないのかなあ。。
当時の風物も満載で、会話の言葉遣いも異なるはずなのに、不思議と古臭くは感じないし、むしろ生き生きして感じられる。
そんな感じで楽しく読めました。純文学って、楽しいなあ。