「物語論で読む村上春樹と宮崎駿――構造しかない日本」 (大塚 英志)

物語論で読む村上春樹と宮崎駿  ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21)
この本の内容をざっくり言うと、「村上春樹宮崎駿もジョセフ・キャンベル−スターウォーズ系の流れに乗った物語(英雄譚)だし、だからこそ海外で受け入れられてる(それ以上の意味や深みは無い)」が主旨のようです。


が、どうなんでしょう。物語の構造だけ取り出したらそりゃ似たような構造なんですが。両者ともに、その構造から溢れ出る部分が読者・視聴者を惹きつけているんだと思うんだけどなー。(少なくとも日本では。)
千と千尋…」と「ハウル…」がほぼ全く同じ構造をしているのに、日本でも世界的に見ても評価に大きな差があるのは、そこの構造以外の部分だと思うわけです。
ただ単にパーツを並べればヒット作、というほど簡単なものではなかろうと。たとえ確信犯的に「受ける構造」を利用した部分があったとしても(村上春樹がそうしただろうという説明は、かなり納得できます)、他の作者による同じような意図の作品は山のようにあるわけで。差が出るのは構造からはみ出した部分だと思うので、そこを論じてほしかった。(筆者のこれまでの論調というか志向性からは、そういう流れにならないとは思いますが。。)