『高い城の男』フィリップ K.ディック 浅倉久志訳

原題 "The Man in the High Castle"、ヒューゴー賞受賞、1962年出版。「枢軸国側が第二次世界大戦に勝利し、世界は日独の支配化にある」という設定の話。日本の支配下にあるアメリカが主な舞台。この世界の中で流行している本は『イナゴ…』という、「もし連合国側が勝利していたら」という設定で書かれた本であり、日本支配の強い場所では読まれているものの、独側では発禁になっている。という非常に楽しい設定。(P.K.ディックのこの本が、出版当時にドイツで発禁処分にあったというHPも見かけて、ちょっと話がうますぎて眉唾ですが、面白いですね。)
日本人が持ち込んだ易経に皆がはまっている様子や、収集癖のある日本人連中が戦前アメリカグッズを買い集める執拗さなんて、想像すると絵面として笑える場面も沢山。敗戦側アメリカ人の心理描写なども説得力があり、当時Dickには、親しい日本人の友人がいたのだろうかなどと考えてしまう。