初代 "King Kong"(1933)

キング・コング [DVD]
白黒のキングコング。初めて見ました。友達と今上映中の"King Kong"の話をすると、「元の映画では恐竜出ないのに」と言われるけど、それは1976年版らしいく(ダンナ談)、この初代はまったく同じ設定。かなり面白いです。ちょっと現代版と比べると(以下延々とネタばれ)
こちらのコングは、かなり怪物的で、人を狙ってつかんで咥える姿は、ゴヤのサトゥルヌスを連想させて怖い。現代版の、特にNYで軽々と建物を壊す同じ圧倒的破壊力で、むしろ自然災害を連想させる。(実際私は、映画を見ながらハリケーン被害を連想してました。)ヒロインを介さずとも、「人間には馴らす事のできない自然」の姿に、彼はここにいちゃいかんよなあと、ごく自然に思える。
あと、原住民が、初代はまるで黒人なのに対して、新作の方は絶妙に無国籍な風体に仕上がっているし、違う形で発達した文明という印象も受けて、かなーり気を使っている感じがする。
ヒロインの描き方がまた違う。初代は、泣き叫んでヒーローに守られるか弱い女性像で、コングにつかまると、コングが服を脱がせて(!)、彼女を触ってその匂いを嗅いだりする。もちろん、半分下着姿で水にぬれて、よろめきながら逃げる姿には、「やっぱそーくるよね」と思いました。(勿論、ダンナは喜んでましたけどね。)
新作の方は、以前に書いたけど、驚くほど全然やらしくない。かと言って女性性もしっかりある。映画を見ながら「ナウシカの『王蟲を殺さないで』」の展開だといやだなあと思ってたけども、(ナウシカは「穢れない少女の純粋な思い」みたいのが別の意味で男の夢の投影のようで、好きになれない)、そっち方向に走ることもなく。ともかく、女性の位置が絶妙で、監督の奥さんがしっかり教育しているのか、かなーり気を使っているのか。
最後の、「美」のせいでコングが死んだ、と言うくだりは両方共通。旧作は勿論「ヒロインの美」。新作の方は、映画中の監督はヒロインを意図してるとしても、観客側はエンパイアステートビルのてっぺんから見る景色をコングと見ることで、むしろ世界の美とか郷愁がコングを殺したんじゃないか、と考えることもできる。
比べると、映画も世相の表れですよね。
しかし私は書きすぎだなあ。King Kong がそんなに好きなんだろうか…。
さーてと、こうなったら、1976版も見なきゃなあ。